高度順応のための富士登山

 チベットのラサは標高3650mのところにあり、高山病にかかる危険性が大きい。数日滞在すれば慣れてくるらしいが、慣れた頃には帰らなければならない。少しでも順応速度を速めるべく、事前に同等の高度を体験しておきたいところだが、国内で同等の高度と言うと富士山しかない。そこで、7月の富士登山を計画し、4月から準備に入った。7月の富士登山が8月のチベット行きにどれだけ役に立つのかとの疑問もあるが、富士山で高山病になった人も2回目は大丈夫ということもあるようなので、ある程度は期待ができるだろう。

装備の準備

 富士登山は本格的な登山ではないが、それなりの装備は必要である。4月中に家族4人分の主要な装備を準備した。新規に購入した主要なものは、トレッキングシューズ、リュック、雨具、ステッキ(これは2人分)、頭に付ける懐中電灯(これも2人分のみ)、高度計、酸素スプレーなどである。
 トレッキングシューズは、さかいやスポーツで購入したが、足の形を調べて合うものを選び中敷きも調整してくれたのでぴったりのものが入手できた。高度計は、最初通信販売でSPALDINGのものを購入したが、精度がいまいちなのと案外かさばるので、その後腕時計に組み込みタイプのCASIO PROTREKのSALOMONモデルをさかいやスポーツで購入した。雨具は上下に分かれたレインスーツを通信販売で購入。高度計と雨具(これは防寒着として利用)はチベットでも大いに役立った。
 この他に持参すべき装備として、サングラス(またはゴーグル)、手袋(軍手)、帽子(風で飛ばないもの)、防寒着、タオル、着替え、防水スプレー、電池、携帯電話、カメラ、フィルム、水、食料(おにぎり、チョコレート、飴)、日焼け止め、湿布、テーピング、薬品類、ガムテープ、トイレットペーパーなどがある。

  参考にしたHP:あっぱれ!富士登山


第1回 5月1日 富士の宮口五合目偵察

 富士登山口は4ヶ所あるが、富士宮口は車で標高2400mの地点まで行けるので、頂上まで最短距離、最短時間で登ることができる。そこで、今回の富士登山は富士宮口から登ることにした。富士宮口五合目へは、まだ行ったことがなかったので、道順、駐車場、および登山口の偵察のためGW中の5月1日の早朝に一人で行ってみた。
富士山スカイラインから見た富士山

F-1 富士山スカイラインから見た富士山

 この日は、御殿場のあたりは雨で山麓も霧に覆われていたが、ある程度登ると急に晴れてきて富士山が見えた。これは富士山スカイラインの、急な登りに差し掛かる直前の駐車場から撮影したものである。かなり残雪があり、登山はまだまだ危険そうだ。
富士宮登山口

F-2 富士宮登山口

 ここが、標高2400mの富士宮五合目の登山口である。2400mでも早足で歩くと頭がくらくらする。まだ早朝でさすがに駐車場は空いていたが、GW中だけあってそこそこに賑わっていた。六合目あたりまで行ってみたいところだが、登山道は立ち入り禁止になっていた。それでも、スキーを担いで登っていく強者もいたようだ。
山頂を望む

F-3 山頂を望む

 五合目からは山頂が直接見える。直線距離では3Km程しかないが、ここを5時間程度かけて登ることになる。山頂が見えるのになかなかたどり着けないのが富士登山の辛いところらしい。
案内板

F-4 案内板

 案内板があり、山小屋の配置や標準の所要時間が書いてある。登山道の他に、宝永火口まで行き林の中を帰ってくるハイキングコースがあることがわかった(所要時間50分)。次回は、このハイキングコースを歩いてみるのが良さそうだ。
駐車場のレイアウト

F-5 駐車場のレイアウト

 駐車場のレイアウトの案内板もある。一方通行でぐるぐる回れるので、良い場所が空いてなければ、回りながら空くのを待っても良さそうである。また、右の端の方よりは半周回った休憩所下の方が階段ですぐに登山口に出られることもわかった。
 この日は朝4時半頃に家を出て2時間ほどで着き、帰りも同じぐらいの所要時間だったので朝の9時頃には帰ることができた。帰ったら、家族は皆起きたばかりだった。

第2回 6月9日 六合目付近まで小手調べ

 この日は家内と2人で、小手調べに五合目付近のハイキングコースを歩いて、状態が良ければ六合目付近まで登ってみることにした。梅雨の晴れ間で混雑するシーズンでもないので、午前9時頃に出発し2時間で到着できた。
六合目付近から山頂を望む

F-6 六合目付近から山頂を望む

 五合目付近には「六合目から先立ち入り禁止」という看板があるが、登山道入口には依然として立入禁止の柵がある。天気も良いので無視して立ち入ったら、結構沢山の人が歩いていた。標高2490mの新六合目の山小屋から、ハイキングコースと登山道に分かれるのだが、まず登山道の方を登ってみることにした。ところが、緩やかな道がどこまでも続き次の山小屋が見えない。実は間違ってブルドーザー道を登っていたのだった。標高2650mあたりで気付いて引き返したが、これはそのあたりで撮影した山頂方面である。この後、新六合目まで降りて再度登山道の方を2600mあたりまで登ってみた。本当の登山道の方は、「えっ、こんなところを登るの?」と言った感じの、岩だらけの急斜面だった。
宝永火口

F-7 宝永火口

 新六合目からハイキングコースを歩くと、雄大な宝永火口が見えてくる。これは、山頂まで登れない人も一度見に来て損はない景色だと思う。火口を眺めながら少し下ってから、林の中を駐車場へ戻っていくことになる。
駐車場への分かれ道

F-8 駐車場への分かれ道

 駐車場への分かれ道から山頂方向を望んだところ。右手が宝永火口で、左手の林の中に入っていくと駐車場に出る。
林の中の景色

F-8 林の中の景色

 林の中はこんな感じの景色が続く。この道が実は非常に長かった。案内板によれば20分ぐらいのはずだが、40分ぐらいかかったのではないだろうか。同じような景色が延々と続くので、いい加減飽きてしまった。
 まあともかく、標高2400〜2600mのあたりを4時間ほど歩き回り合計350mは登ったので、だいぶ体が慣れたはずである。次は、いよいよ山頂へアタックだ!。

第3回 7月12日 8合目まで到達

 この日、当初からの計画通り家族4人で山頂を目指した。土日や7月下旬は平日も混雑するので、7月前半の平日を選び、また相当に疲れると思われるので休み前の金曜に有給休暇を取得して臨んだ。なお、この日は子供たちは試験休みである。直前に台風が来ていて危うかったが、首尾良く通り過ぎて台風一過の快晴で、更に斜面は適度に湿っていて埃が立ちにくいという、絶好のコンディションだった。
登山前

F-9 登山前

 ほぼ予定通り(10分遅れ)の06:40に五合目に到着し、車の中でパンを食べて準備体操をしてから出発。出発予定は07:00だったが、ここでのんびりしすぎて07:45の出発となった。この時は、まだ元気いっぱい。
八合目に到着

F-10 八合目に到着

 次男が足が痛くなったりして若干遅れながらも、七合目あたりまでは出発時の遅れをそれほど拡大せずに登って行ったが、次第に家内のペースが落ち始め標高3250mの八合目に到着した時は当初予定に比べ2時間以上の遅れとなってしまった。この後も遅れが拡大すると予想され、このままでは明るいうちの下山は困難になるので、残念ではあるが山頂まで行くのは断念しここから引き返すことにした。
地点 標高 到着予定到着 出発
五合 2400m06:3006:4007:45
新六合2490m07:2008:0508:15
新七合2780m08:3009:4009:55
七合 3010m09:3011:0011:10
八合 3250m10:2012:2513:10
七合 3010m14:2014:40
新七合2780m15:4516:05
新六合2490m17:3017:50
五合 2400m18:1018:30
長〜い下山

F-11 長〜い下山

 八合目でのんびりおにぎりを食べ13:10に下山を開始したが、岩だらけの急斜面に家内が怯えて超スローペースになってしまった。途中、何度もこの写真のように休みながら、18:10にようやく五合目にたどり着いた。後半、長男は吐き気に私は頭痛に悩まされた。下りも登りと同じぐらい時間がかかってしまった。
 この日は、山頂までは行けずに残念ではあったが、標高3000m超の領域で苦しい登りを経験したので、高地順応力は相当に増強されたことだろう。
 あと、台風の影響が残っているのか風が強く、何度か帽子を飛ばされそうになり、途中からかぶるのをやめてしまった。頭痛はそのせいかも知れない。また、顔には日焼け止めを塗っていたのだが、首や耳が不十分だったため結構日に焼けてしまった。数日して、耳も帽子をかぶらなかった頭も水ぶくれっぽくなり皮が剥けてきた。腕は長袖なので全く日焼け止めを塗らなかったが、途中で暑くなりうっかり腕まくりしてしまったため、火傷のような日焼けになってしまった。みっともないので夏中長袖で過ごすことになった。腕の日焼け跡は、10月末の現在でもうっすらと残っている。

第3回 7月26日 登頂成功

 12日の登山でも、チベット行きの準備としては十分とは思ったが、山頂まで行けなかったのはいかにも悔しい。ということで、再チャレンジの機会をうかがっていた。家族はもう行きたくないということなので、26日の金曜日に再び有休を取得して、今度は一人で挑戦した。集団で登ると、常に遅れた人に合わせざるを得ないという問題があるが、一人であれば何かあったときに心配な点もあるものの、マイペースで無駄なく登れるという利点がある。
 なお、前回の教訓から、帽子を飛ばされにくいものに交換し、日焼け対策も万全にした。暑くても、腕まくりはしないことにした。
夜明け前の富士山

F-12 夜明け前の富士山

 この写真は5月1日の最初の写真と同じ場所から撮影したもの。今回は余裕をみて、家を3時半に出発したので、この時点ではまだ夜明け前だった。東名高速の途中で多少雨がパラついていたが、富士山に近づくと急に晴れてきてこの日も快晴になった。
七合目付近からの眺め

F-13 七合目付近からの眺め

 前回登った八合目までは快調なペースで登って行った。この写真は七合目付近からの眺めで、左手に宝永火口、右側の遙か下に新六合目の山小屋が見えている。
最後の斜面

F-14 最後の斜面

 九合五勺を過ぎたところの、最後の斜面。左側上方の窪んだ形のところに山頂への入り口があり鳥居もあるのだが、この写真ではよく見えない。しかし、実に良い天気だった。
山頂に到着

F-15 山頂に到着

 ついに山頂に到着。神社や売店・休憩所・山小屋があり賑わっている。
地点 標高 到着 出発
五合 2400m05:2506:05
新六合 2490m06:1806:25
新七合 2780m07:1007:20
七合 3010m08:0508:15
八合 3250m09:0009:20
九合 3460m10:0010:10
九合五勺3590m10:5011:00
山頂 3730m11:4512:00
剣が峰 3776m12:3012:40
山頂 3730m 13:20
五合 2400m16:55
剣が峰

F-16 剣が峰

 神社の前を左に折れると、剣が峰がそびえている。これを登りきらないと日本での最高地点に行ったことにならない。この最後の登りは急斜面でしかも滑り易く、疲れも極限に達しているのでなかなか大変だった。30分かけて何とか登った。
登頂証拠写真

F-17 登頂証拠写真

 剣が峰には測候所があり、その敷地内に最高地点があり、記念碑が建っている。ここで証拠写真を撮った(休んでいる他の登山者に撮ってもらった)。結構、怪しい風体ではある。
剣が峰から見た浅間大社方面

F-18 剣が峰から見た浅間大社方面

 剣が峰からは、先ほど到着した山頂の浅間大社と休憩所が見える。神社周辺は、登り斜面に比べると広々しているように感じたが、ここから見ると噴火口のヘリの結構危なっかしい場所に建っていることがわかる。
火口の中

F-19 火口の中

 火口内は荒涼としていて、雪も残っていた。ここには掲載できないが、写真5枚ぐらいを貼り合わせて大パノラマ写真を作ると、火口の全貌がわかる。
 この後、山頂の休憩所で30分ほど休んでから下山した。快調なペースで降りて行き3時間半ほどで五合目に着いたが、途中、八合目の手前で足を滑らせて転んでしまった。飛ぶように降りていく人を見て、ああそうかスキーでコブ斜面を滑る要領だなと思い、ダブルステッキで体を支えつつ岩の頭を次々に狙ってリズム良く降りていったところ、岩の上に乗った砂利にジョリッと足を取られ滑って転んでしまったのだ。転んでから2mほど斜面を転げ落ちたような気もする。長袖シャツを着ていたのでまだ良かったが、それでも両肘を擦り剥いてしまい、バンドエイドを貼りまくって、その後はおとなしく降りて行った。
 なお、この日は米軍の兵士の一団も登っていたのだが、彼らはすごい。ジグザグの登山道が混んでいると見るや、まっすぐにショートカットして駆け下りていくのである。しかも全然転ばない。訓練された軍隊は、さすがに違うなあと感心してしまった。
 何はともあれ富士山登頂を果たし、さあこれでチベット行きの準備は万全、と思ったのだが・・・。

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